大晦日


晦日みそか)とは三十日の古い読み方で、月の終わりを表す言葉だそうです。
晦日とはその年の終わりを表す言葉だそうです。

今日は2007年12月31日、2007年の最後の日、大晦日です。
晦は月が隠れるという意味での「つごもり」
大つごもりの今日の夜空
月は見えず、冷たい空気の中にいくつかの星の煌きが見えました。

2007年12月31日 朝6時24分 かつての「私のヒーロー」は息をひきとりました。
今、ヒーローの魂はどこを彷徨っているのか
冷たい空に目を凝らし、闇夜に耳を澄まして 彼の気配をさがしています。

ヒーローのふるさとの空







「夜半の目覚め」 井上靖

今宵もまた刃形のつきが出ている。青い月光に照らされて、
磧(かわら)はどこまでも続いている。何十年もかかって、
自分が歩いてきた磧である。磧はどこまでも見渡せる。よく
こんなに見渡せると思うほど遠くまで見渡せる。その磧の道
を人が歩いてくる。いつか一度会い、それ限り思い出さなか
った人である。曾て(かつて)交わした会話を、もう一度
交わすためにやって来るのである。そのためだけに、その人は
やって来る。やがて、私たちは言葉を交わす。現在とは無関係で、
遠い過去の、その時だけ意味を持っていた言葉が、月光の中を
走り、光り、凍る。
一瞬にして演技は終わり、その人は居なくなる。
あとに言葉だけが残る。
私は言葉と一緒に残されている。凍った言葉は、私の掌の
中で次第に重さを増してくる。その言葉の重さに耐えかねて、
私は次第に小さくなる。どこまでもどこまでも、小さくなって行く。


月光が消え、磧の道が消える。私は再びもとの大きさを取り戻す。
私の掌から言葉は消えて失くなっている。
その頃から風の音が聞こえて来る。
私は一人の旅人となって歩き出す。
まだ歩いたことのない遠い先に向かって歩き出す。
言葉の持った冷たさだけが、私には残されている。