本薬師寺跡のホテイアオイは今年もきれいでした。
いつの頃からでしょうか?お盆を過ぎると本薬師寺跡の周辺の田んぼが涼しげな薄紫の花で埋め尽くされます。
本薬師寺とは奈良の薬師寺に対しての呼び方です。
本薬師寺は『日本書紀』によると、天武天皇が皇后である持統天皇の病平癒を記念して680年に発願されたそうですが、寺の建立時期は不明です。
平城京遷都に伴い718年移転しました。寺が移転した跡も平安時代中期までここに伽藍が存在していました。それで、平城京の薬師寺に対して本薬師寺呼ぶようになりました。
その本薬師寺跡周辺で一面に薄紫の花がさいています。水生植物の仲間でミズアオイ科のホテイアオイの花です。8月中旬から10月中旬までと、花期が長い花です。
今は隣の田んぼで咲く蓮の花との共演が終わり、本薬師寺跡や畦道の彼岸花とのコントラストがあたりをいっそう華やかにしています。
ホテイアオイの優しそうな水色と花の美しさで この花が「害草の一つ」としてあげられていることを忘れてしまいがちですが、中南米原産の水草は驚くほどの繁殖力で、湖面を覆い尽くしていまいます。そのため、もともと日本の水辺で生息していたアサザやトチカガミなどが消えてしまうという外来植物の困った一面が「害草」と言われる所以です。
多年草で浮遊性の植物ですので、暖地では枯れずに繁殖し、水路や湖面全体を覆い尽くし、水面に日光が当たらなくなってしまいます。そのため、水中の酸素不足を引き起こし、水質もかえって悪くなり、他の生き物がすみ難くなるといった困ったことが起こります。
反面、暖かい気候と富栄養化した水域では1週間に2倍に増殖する旺盛な繁殖力に着目し、水中の養分を体内に吸収し蓄える作用をいかして、水質浄化植物として活用しているところもあるようです。
ホテイアオイの育成目的をきめることで役立つ植物にもなるようです。それもこれもホテイアオイを育てた人がきちんと管理することが大切です。
本薬師寺跡周辺のホテイアオイは「畝傍(うねび)北小学校2年生が植えました」という立て札がたっていました。
米の生産調整の一環として休耕水田(面積約1.4ha)を利用して栽培されています。
ホテイアオイは葉の付けの根のところが布袋さんのお腹のように膨らんでいるところから「ホテイ」の名前がつけられたそうです。明治時代には観賞用として日本に入って、金魚鉢を飾る植物として普及していったようです。このような外来種をきれいな花だからと言って 安易に水田や池などに捨てると植生の単一化が進み環境悪化の原因にもなるので、注意したいものですね。